【通所介護(デイサービス)|神奈川・東京・静岡】42拠点・650名の大規模組織が挑む業務標準化 仮説設定とタイムスタディで見えた、デイサービスの本質的課題

42拠点・650名の大規模組織が挑む業務標準化 仮説設定とタイムスタディで見えた、デイサービスの本質的課題

株式会社スマイル
営業本部 執行役員 営業部 部長

萬田 勝彦 氏

本記事は、2025年10月3日に開催された「科学的介護フォーラム’25 in 大阪」におけるハカルトコミュニティオフ会での萬田様のご登壇内容を基に作成しております。

導入の背景

神奈川、東京、静岡に42拠点、従業員650名(うち外国人スタッフ50名、今後70名予定)を擁する株式会社スマイル。「笑顔の輪をつなぐ」をミッションに掲げ、自立支援型デイサービスを展開する同社は、多拠点展開ならではの課題に直面していました。

「拠点ごとに業務のやり方が異なり、標準化が進んでいませんでした。特に生活相談員の業務に偏りがあり、特定のスタッフに負担が集中していました」と語る萬田部長。さらに、外国人スタッフの増員を控え、誰もが理解しやすい業務の仕組み作りが急務となっていました。

しかし、何が問題なのか、どこから手をつけるべきか。現場の感覚だけでは、組織全体の課題を正確に把握することは困難でした。

仮説設定から始める―壁打ちミーティング

スマイルが最初に取り組んだのは、「課題の仮説設定」でした。いきなりデータを収集するのではなく、まずハカルトの担当者とともに現状の課題を整理する場を設けたのです。

この壁打ちミーティングでは、現場で感じている課題を言語化し、仮説として明確にしていきました。

  • 「生活相談員が本来の相談業務に十分な時間を使えていないのではないか
  • 「フロアリーダー不在時に業務が停滞しているのではないか」
  • 「各拠点で業務のやり方がバラバラなのではないか」

こうした仮説を立てた上で、2024年5月、デイサービス領域では初となるタイムスタディを実施しました。

仮説検証としてのタイムスタディ―データが示した現実

ハカルトを活用したタイムスタディでは、生活相談員やフロアリーダーの業務を1日単位で詳細に記録。どの業務にどれだけの時間を使っているのか、時間帯ごとの業務の偏りはないか、といったデータを収集しました。
結果は、仮説を裏付けるものでした。

データから見えた3つの課題

1. 生活相談員業務の偏り

生活相談員が本来注力すべき「利用者・家族との相談対応」に十分な時間を割けておらず、実際には雑務や計画書作成に時間を取られていることが明らかになりました。さらに、相談員によって業務量に大きな差があり、特定のスタッフに負担が集中している実態も浮き彫りになりました。

2. フロアリーダー不在時の業務停滞

フロアリーダーが休暇や外出で不在の際、通常業務が滞るケースが頻発。リーダーへの業務依存度が高く、代替要員による対応が困難な構造になっていました。

3. 拠点間の業務バラツキ

同じ職種でも、拠点によって業務内容や時間配分が大きく異なることが判明。42拠点全体で業務の標準化が進んでいない実態が、データで明確に示されました。

「仮説として感じていたことが、タイムスタディのデータで裏付けられました。同時に、仮説とは異なる新たな課題も見えてきました。データがあることで、取り組むべき優先順位が明確になったのです」と萬田部長は語ります。

4. 計画書作成の可視化と計画的更新

計画書などの更新時期を可視化し、直前での慌ただしい作業を防止。計画的に業務を進めることで、相談員の負担軽減につながりました。

段階的展開―モデル事業所から全社へ

スマイルでは、いきなり全42拠点で一斉に改善策を実施するのではなく、まずモデル事業所で実証を行う方針を採用しました。

「まずは1拠点で試し、振り返りを行い、改善を重ねる。その後、成功事例として他の拠点に横展開していく。このサイクルを繰り返すことで、無理なく全社展開を進めています」

現在、モデル事業所での実証実験を進めながら、他拠点への段階的展開を計画中です。

自立支援型介護とタイムスタディの親和性

スマイルが実践する自立支援型介護は、「科学的根拠に基づくケア」を重視しています。この理念とタイムスタディは高い親和性があります。

「自立支援型介護では、利用者の状態を数値化し、改善効果を測定します。同じように、職員の業務も数値化し、改善を図る。この一貫した姿勢が、組織全体のデータドリブンな文化を育てていると感じます」

数値化文化の醸成

利用者のケアだけでなく、業務プロセスも数値化する文化が浸透することで、職員の意識も変化していきます。

  • 「忙しい」ではなく「○○業務に△時間かかっている」という具体的な表現
  • 「改善した」ではなく「□□時間削減できた」という効果の定量化
  • 経験や勘ではなく、データに基づく議論

大規模組織だからこそ得られる効果

42拠点という規模だからこそ、タイムスタディの効果が大きくなる側面もあります。

1. 統計的な分析が可能

多数の拠点のデータを比較することで、「優れた拠点の共通点」「課題がある拠点の特徴」などが統計的に分析できます。

2. ベストプラクティスの宝庫

42拠点の中には、必ず効率的な業務オペレーションを実践している拠点があります。それを他拠点に展開することで、全体最適が実現します。

3. 改善効果の累積

1拠点で10%の効率化を実現した場合、それを42拠点に展開すれば、組織全体では大きなインパクトとなります。

今後の展望―データに基づく継続的改善

スマイルでは、今回のタイムスタディを一度限りの取り組みで終わらせるのではなく、継続的にデータを取得し、改善を重ねていく計画です。

「仮説を立て、データで検証し、オペレーションを見直す。そして振り返りを行い、次の改善につなげる。この繰り返しが、組織全体の成長につながると考えています」

外国人スタッフが増える中、誰もが理解しやすい標準化された業務フローの構築は、スマイルにとって今後ますます重要なテーマとなります。タイムスタディを活用した科学的なアプローチが、大規模組織の業務改善モデルとして注目されています。


【株式会社スマイル】

設立年月:平成6年3月
拠点数(エリア):42拠点(神奈川・東京・静岡)
従業員数:約650名
URL  :https://smile-kaigo.net/