【訪問看護|神奈川県】離職率36%からの挑戦 タイムスタディで見えた、訪問看護の働き方改革への道筋

離職率36%からの挑戦 タイムスタディで見えた、訪問看護の働き方改革への道筋

株式会社幸
代表取締役 看護師

森永 早紀 氏

本記事は、2025年10月3日に開催された「科学的介護フォーラム’25 in 大阪」におけるハカルトコミュニティオフ会での森永様のご登壇内容を基に作成しております。

課題の始まり―離職率36%という現実

2022年に開設した訪問看護ステーション幸。現在4拠点、約50名体制で訪問看護サービスを展開する同社は、開設当初から深刻な人材定着の課題を抱えていました。

「離職率が36%という数字に直面したとき、このままでは事業の継続すら危ういと感じました」と語る代表の森永氏。訪問看護ステーション幸では、効率よく訪問件数を増やすことで職員の収入向上につながると考え、直行直帰のスタイルを採用していました。しかし、その結果として組織としての一体感を持ちにくく、相談や休みの取りづらさが常に課題となっていました。

さらに、厚生労働省が定める生産性向上の要件についても、実施率はわずか11%。業務の見える化ができておらず、どこに問題があるのか、何から手をつけるべきか分からない状態が続いていました。

生産性向上への取り組み―手探りの改善活動

訪問看護ステーション幸では、離職率改善に向けて様々な取り組みを始めました。まず直面していたのは、以下のような構造的な課題でした。

  • 直行直帰により、職員同士が顔を合わせる機会が少なく、相談しにくい環境
  • 業務の属人化が進み、「自分が休むと周りに迷惑がかかる」という意識から休暇取得を躊躇
  • 小さな問題が見過ごされ、深刻化してから表面化するケース

新人職員に対し、経験豊富な先輩職員が1対1で相談に乗る「エルダーメンター制度」を導入。訪問先での困りごとや不安を気軽に相談できる仕組みを整えました。

ICTツールの積極活用

業務記録のデジタル化や、チャットツールを活用した情報共有を推進。移動中でもiPadから記録や相談ができる環境を整備し、業務の効率化と職員間のコミュニケーション活性化を目指しました。

インセンティブ制度の設計

ICT活用により業務の時間効率を高めると共に、空いた時間で利用者宅への訪問件数を増やすことができれば、その成果を給与として明確に評価する仕組みを導入しました。 職員の努力が収入に直結することで、モチベーション向上にもつながっています。

改善の実感と新たな疑問

これらの取り組みにより、職場の雰囲気は徐々に改善され、離職率は36%から10%へと大きく改善しました。

しかし、森永氏には新たな疑問が生まれていました。

「確かに改善は進んでいる。でも、本当にこの方向性で正しいのだろうか?」
「職員一人ひとりの業務実態を、もっと詳しく把握する必要があるのではないか?」

改善を進める中で、感覚ではなくデータに基づいた現状把握の必要性を強く感じるようになったのです。

タイムスタディとの出会い―定量的な現状把握へ

そんな中、森永氏が出会ったのがハカルトのタイムスタディでした。

訪問看護という業界では、移動時間や記録時間、直行直帰といった要素があり、従来の施設型介護で活用されているタイムスタディの手法をそのまま適用することは困難でした。訪問看護領域でのタイムスタディ実施は稀にみる取り組みです。

「これまで感覚で捉えていた課題を、データで可視化できるかもしれない。それが改善の次のステップにつながるはずだ」

2025年、訪問看護ステーション幸はハカルトを活用し、訪問看護領域で本格的なタイムスタディを実施。職員の移動時間、訪問時間、記録時間、事務所滞在時間など、業務の実態を詳細に記録し、分析を進めました。

タイムスタディから見えたこと

タイムスタディの結果、訪問看護ステーション幸では、これまで感覚的に捉えていた課題が数値として明確になりました。

職員一人ひとりの業務時間の使い方、時間帯ごとの業務の偏り、拠点間の業務バラツキなど、これまで見えていなかった実態が浮き彫りになったのです。

「データを見て、改めて気づかされることが多くありました。改善策として進めてきたことが、実際にどう機能しているのか。逆に、まだ手をつけられていない部分はどこなのか。それが明確になりました」と森永氏は語ります。

さらなる働きやすさへ―これからの取り組み

今回のタイムスタディ実施により、訪問看護ステーション幸では業務の現状を定量的に把握することができました。

これまでの改善活動により、離職率は36%から業界平均16.7%を下回る10%へと大幅に改善しました。職場環境も徐々に改善され、職員の定着率は着実に向上しています。そして今、タイムスタディのデータが示す具体的な課題に対し、さらに精度の高い改善策を検討している段階です。

「タイムスタディを通じて、職員一人ひとりの働き方が見えるようになりました。今後は、このデータを活用しながら、さらなる働きやすさの実現に向けて、具体的な改善策を一つひとつ実行していく段階です」

今後の展望

訪問看護ステーション幸では、今後も継続的にタイムスタディを実施し、PDCAサイクルを回していく計画です。

「訪問看護は今後ますます需要が高まる分野です。しかし、人材不足は業界全体の課題。私たちの取り組みが、同じ課題を抱える他の訪問看護ステーションの参考になれば嬉しいです」

課題に向き合い、改善を重ね、そしてタイムスタディで現状を可視化した訪問看護ステーション幸。データに基づいた次のステップへと進む同社の取り組みは、訪問看護業界全体にとっても示唆に富む事例と言えるでしょう


【株式会社幸】

業 種:訪問看護
所在地: 〒221-0061 神奈川県横浜市神奈川区七島町112番地5 パレス日生 1階
従業員数:約50名
URL :https://sachi-houkan.jp/