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【レポート】鳥取県令和7年度ケアプランデータ連携システム普及加速化モデル事業(効果測定)成果報告会を開催

米子市をモデル地域に、介護現場のデジタル化促進支援の成果を発表

株式会社最中屋は、令和7年12月17日(水)、米子コンベンションセンター(ビッグシップ)にて、「鳥取県 令和7年度 ケアプランデータ連携システム普及加速化モデル事業(効果測定)成果報告会」を開催いたしました。本報告会には、米子市内の介護事業所関係者や行政関係者が多数参加し、ケアプランデータ連携システムの導入効果や今後の展望について活発な議論が交わされました。

開催の背景と目的

報告会は、米子市福祉保健部 長寿社会課 課長の山崎伸之氏による開会挨拶をもって始まりました。山崎氏は、「米子市におけるケアプランデータ連携システムの導入率は、全国の同規模自治体と比較しても約40%と高い水準にある」と述べられました。あわせて、「近年深刻化している人材不足に対応するためには、業務の効率化および生産性の向上が不可欠であり、本システムはその実現に向けて非常に有効な取り組みである。今後は導入率100%を目指し、引き続き推進していきたい」との抱負が示されました。

続いて、米子市長寿社会課の矢野氏より、本事業の背景および目的について説明がありました。矢野氏は、「ケアプランデータ連携システムの大きな特徴は、個々の事業所での導入が、圏域全体へと波及していく点にある」と強調されました。一方で、「操作の難しさや介護ソフトの多様性といった課題も存在しており、事業所が単独で悩むことのないよう、支援体制や環境づくりが重要である」と指摘されました。

また、特筆すべき点として、昨年度に実施されたアンケート調査の結果が紹介されました。調査では、「普及率が十分でないことにより、事業所ごとに手渡し・FAX・データ連携といった複数の方法が混在し、かえって業務が煩雑になっている」といった意見が多く寄せられたとのことです。これらの結果を踏まえ、「導入率100%という明確な目標に向け、迷うことなく取り組みを進めていく必要がある」との強い決意が示されました。

ケアプランデータ連携システムの概要と伴走支援事業

株式会社最中屋の角森氏より、ケアプランデータ連携システムの概要と伴走支援事業について説明が行われました。

ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターだけでなく、在宅介護サービスすべてにおいてオンラインでケアプラン等のやり取りを完結するための仕組みです。各事業所が使用している介護ソフトから、システムに対応した形式でファイルを出力し、暗号化して安全にデータをやり取りできます。

今回の伴走支援事業では、令和7年9月から米子市内の15事業所を対象に実施。支援内容は以下の通りです。

【  9 月 】事業説明会、導入前調査(タイムスタディ・アンケート)

【 10 月 】導入支援勉強会(オンライン)、操作方法・連携開始支援

【 11 月 】見学会(箕蚊屋地域包括支援センターにて)

【 12月以降 】導入後調査(タイムスタディ・アンケート)実施、参加事業所の進捗に合わせた伴走支援を継続

パネルディスカッション①:導入事業所の生の声

本事業に参加した3事業所(地域密着型通所介護、居宅介護支援、訪問看護)の代表者によるパネルディスカッションでは、導入の実体験が語られました。

■参加のきっかけ

参加事業所からは、「米子市から直接お声がけいただき、やってみないことにはわからないと思って参加を決めた」「ケアマネージャーさんから以前から声をかけられており、県や市からのメールも多く届いていた。伴走支援していただけるタイミングで手を挙げた」という声が聞かれました。

また、2023年4月から既に導入している事業所からは、「さらに活用できる知識を習得したい」という思いで参加したとの説明がありました。

■導入時の課題と対応

導入時の最大の課題として複数の事業所が挙げたのが、「電子証明書とIDパスワードの管理」でした。ある事業所からは、「数年前に取得したIDとパスワードがどこに行ったか分からなくなり困った。電子請求システムにログインすれば確認できることを教えていただき助かった」との声がありました。

また別の事業所からは、「説明書を読むと膨大すぎて混乱するので、ただやってみようと思った。分からなければ伴走支援に聞けばいいと進めた」と実践的なアプローチを取ったことが共有されました。

■データ連携開始時の動き

連携先事業所の探し方については、「WAMNETで検索して関わっている事業所を洗い出した」という方法が共有されました。ある事業所では、最初に4事業所から始め、翌月には13事業所まで拡大。手紙を添えて連携の呼びかけを行ったとのことです。

別の事業所では、FAX送付時の送付状に「データ連携に対応しています」という案内を記載する方法で周知を図り、現在29事業所とデータ連携を実施しているとの報告がありました。

■データ連携開始後の変化

データ連携を開始してからの変化として、印象的な報告がありました。ある居宅介護支援事業所からは、「以前は月初めに全職員が実績入力で忙殺されていたが、今は事務員1人が200件近くの請求を担当。他の職員は月初めから訪問に入れるようになり、明らかに時間の流れが変わった」と効果を実感しているとのことです。

一方で、率直に課題も指摘されました。「提供票を受け取ったデータを自社システムに取り込んだ時に、時間や加算の誤りがあると修正が大変。相手事業所に再送をお願いすることが多々あった」「実績の二重チェックがデータ上では難しく、結局紙で出力してチェックしている。つながっている事業所には持っていかないが、印刷したデータは破棄するという無駄な作業をしている」と現状の課題が共有されました。

訪問看護ステーションからは、「訪問看護専用ソフトにデータを取り込んでも、訪問予定には自動反映されない。一度出力して確認してから予定を組んでいる」と、介護ソフトの対応状況による制約が説明されました。

調査結果および評価報告

株式会社最中屋より、タイムスタディ調査とアンケート調査の結果が報告されました。

■タイムスタディ調査の結果

タイムスタディ調査は、弊社が開発した計測アプリケーション「ハカルト」を使用し、月末25日~末日と月初1日~10日の期間、ケアプラン関連業務の実施時間を計測しました。

【居宅介護支援事業所の傾向】

  • 提供票の作成は朝と夕方に集中
  • 印刷も作成と同じタイミングで実施される傾向
  • FAXは夕方に集中するが、作成・印刷とは時間差がある場合も

【介護サービス事業所の傾向(月末)】

  • 書類の振り分けは17時台がピークだが、日中にも分散
  • 書類の持参は月末2日間、サービス終了後の遅めの時間帯に集中

【介護サービス事業所の傾向(月初)】

  • 実績の確認は午前中の早い時間から15時頃まで
  • 書類持参は午前中の比較的早い時間から15時頃まで
  • FAXは夕方のタイミングが多い
  • 自事業所内で行う事務系作業は午後から夕方に集中

■導入前アンケート結果

【負担に感じていること】

  • 居宅・サービス事業所ともに「やりとりに時間がかかる」が最多
  • 「印刷に時間がかかる」「転記に時間がかかる」も上位
  • その他の意見:「紙が無駄だと思う」

【データ連携に期待すること】

  • 「時間の削減」が最多
  • 居宅介護支援事業所では「実績ファイリングの時間削減」が顕著
  • その他:「ミスによる点検を減らしたい」

【削減された時間の活用方法】

  • 「利用者とのコミュニケーション」が最多(双方共通)
  • 「事業者内のカンファレンス・会議」「研修」も多数
  • 直接的なケアやサービスの質向上につながる業務に当てたいという意向が明確

■導入後アンケート結果(進行中)

導入後のアンケートでは、以下のような回答が得られています。

  • データ連携による共有割合:居宅で3割、サービス事業所で1割程度(導入後1~2ヶ月時点)
  • 負担が軽減された業務:「提供表の転記ミス」「実績確認の時間」
  • 新たに当てられた時間:「利用者とのコミュニケーション」(一部事業所)
  • 継続使用意向:「普及率が上がれば実感につながる」との声

介護情報基盤について

米子市長寿社会課の前島氏より、今後予定されている介護情報基盤について説明がありました。

介護情報基盤は、ケアプランデータ連携に加えて、要介護認定情報、住宅改修の利用状況、介護保険証などが統合される予定です。令和10年4月1日までに全市町村での運用が予定されています(現時点での予定)。

米子市では、来年秋に介護保険システムの新システムへ移行予定で、その後、安定稼働の段階で介護情報基盤との接続を行う計画です。

システム導入には助成金が準備されていますが、現時点で判明しているのは申請受付期限が令和8年3月13日までという点のみで、来年度の継続については未定とのことです。

パネルディスカッション②:これからの事業所間連携について

第2部のパネルディスカッションでは、先の3事業所に加えて、箕蚊屋地域包括支援センターの林原氏と米子市の矢野氏も参加し、データ連携を活用した今後の連携について議論が行われました。

■データ連携したい書類・情報

地域包括支援センターからは、「提供票・実績はもちろん、ケアプラン(利用者サインなしでも可)、会議録、支援経過などをPDF化してデータ連携している。郵送がほぼなくなり、個人情報の安全性も担保できている」と活用状況が紹介されました。

一方、居宅介護支援事業所からは、「モニタリングや計画書など多くの書類がある。各職員にPDF化してもらい、それを取りまとめて送信する作業を考えると、現状では対応が難しい。介護ソフトから直接送信できるようになれば活用範囲が広がる」という意見が出されました。

訪問看護ステーションからは、「計画書、報告書、担当者会議の内容などが簡単にやり取りできると、郵送代やFAX代、手間が削減できる」という期待が示されました。

■対面・電話でのやりとりを残したいこと

全事業所共通で、以下の内容については引き続き対面・電話でのやりとりが重要とされました。

  • 緊急時・急変時の連絡…入院、体調変化、サービスのお休みなど、タイムリーな情報共有が必要
  • ニュアンスが重要な情報…家族関係、利用者や家族の思い、微妙な変化など
  • 緊急の要望や変更…本人・家族からの急な要望や依頼

地域包括支援センターからは、「電話でいただいた内容は支援経過に残しているので、二重の記録は不要」という実務的な意見も共有されました。

■データ連携が進んだ先の展望

参加した事業所からは、データ連携が100%に近づいた際の展望について、以下のような意見が出されました。

地域包括支援センターからは、「包括はプラン数の上限がないため、前年同月より20~30件増えているが、同じ人数で残業なしで対応できている。月初めから地域活動に向かえるようになったことが大きな変化」との報告がありました。

居宅介護支援事業所からは、「100%データ連携になれば、月初めに自分が動かなければという縛りがなくなる。天気のいい日に利用者とのレクリエーションを優先できるようになる」という展望が語られました。

サービス事業所からは、「現在、連携システムとFAXで数日かかっている作業時間が短縮されれば、訪問や書類作成に時間を充てられる」という期待が示されました。

米子市長寿社会課の矢野氏からは、「行政の立場として、データ連携100%になれば、ケアプランデータから地域分析ができるようになる。どういった課題を抱えた方が多いか、どんな目標に向かってサービスを利用されているかが見えてくれば、より精度の高い地域づくりにつながる」との見解が示されました。

■まとめ

報告会の最後には、鳥取県福祉保健部ささえあい福祉局長寿社会課 介護保険・施設担当 課長補佐 安達直樹氏より閉会の挨拶がありました。

鳥取県長寿社会課の安達氏は、国の補正予算における処遇改善加算について言及し、「在宅系サービスでは、ケアプランデータ連携システムを導入した事業所に限り、最大で1万9千円の加算が上乗せされる」と説明。「令和9年度の報酬改定では生産性向上が柱になることは間違いない。今から準備を進めてほしい」と呼びかけました。

また、「来年度も引き続き県として連携システム導入支援を進めていく。処遇改善加算や物価高騰支援など、様々な支援メニューを準備する予定なので、鳥取県長寿社会課のホームページをチェックしてほしい」と情報提供を促しました。

参加者アンケート結果:高い満足度と前向きな評価

報告会終了後に実施したアンケートでは、31名の参加者から回答が寄せられ、報告会への高い満足度と今後への期待が示されました。

■満足度

満足・大変満足と回答した参加者が**53.3%**に達し、参加者の多くが報告会の内容に満足していることが分かりました。

  • 大変満足:4名(13.3%)
  • 満足:12名(40.0%)
  • 普通:13名(43.3%)
  • やや不満:1名(3.3%)
  • 不満:0名(0.0%)

■導入状況

参加者の導入状況は以下の通りでした:

  • 既に導入・活用している:17名(54.8%)
  • 導入手続き中/これから導入したい:6名(19.4%)
  • 導入を検討しているが、迷っている: 5名(16.1%)
  • その他(わからない/決裁権がないなど):3名(9.7%)

半数以上の事業所が既に導入・活用しており、米子市の先進的な取り組みが確認できました。また、導入を検討中・予定の事業所も約2割に達しており、今後さらなる普及が期待されます。

■今後必要な支援(複数回答)

参加者が今後必要としている支援として、以下の項目が多く挙げられました:

  • 導入時の技術的サポート・伴走支援の継続:18名
  • 導入手順のより詳しい説明・マニュアル:13名
  • 連携先事業所とのマッチング支援:12名
  • 先行導入事業所の具体的な成功事例:9名
  • 業務削減効果の定量的データ:8名

特に「伴走支援の継続」を求める声が最も多く、一人で悩まずに相談できる体制の重要性が浮き彫りになりました。

■参加者の声(自由記述より抜粋)

報告会に参加した事業所からは、前向きなコメントが多数寄せられました:

【導入への意欲が高まった声】

  • 「データ連携を実際に行われている事業所の方々の報告を伺うことができて、実際の様子がよくわかりました。業務の時間の削減が図れると利用者との時間に使えるので、できるだけ早めに使えるようにしたいと思います」
  • 「活用にあたり気構えていたところはあったが、本日の話をお伺いし、少しずつ始める。実践の中で、取り入れながら分からないところはサポートを受け、徐々に取り入れていけばいいのだなと不安なところが軽減できました。うまく活用できたら、大分効率がよくなるんだろうなとイメージできました」
  • 「これから導入していきたいと考え動き出していますが、不安感もあり、伴走支援も受けられたと思い、お話を聞かせていただきました。ネガティブな話も聞けたことがとてもよかったです」

【業務改善効果への期待】

  • 「システム導入してみて、対象事業所を絞って一連の流れを確認、慣れていく段階。現状、提供票を各事業所へ渡す手段として、FAXが一番多く時間をとっている。半日かかることもあり、システムにてデータのやり取りができるようになれば、業務改善の効果は大きいと思う」
  • 「使っている介護ソフトにもよるでしょうが、福祉用具貸与が予定と実績の差がわかりやすくなる。各サービス別に利点を伝えるときに活用できると思います。今後も活用していきたいです。いろんな立場の方の意見が聞けてとても参考になりました」

【今後への期待と課題】

  • 「すべての事業所にシステムを導入してもらいたいが、費用負担及び新たな業務負担が導入したメリットを上回ってしまうような小規模事業所への支援が必要。逆に手間がかかるようであれば、導入に消極的になるのは当然かと思います。データ送信時の手間がもう少し簡素化されれば助かる」

総括と今後の展望

今回の成果報告会を通じて、以下の点が明らかになりました。

■明らかになった成果

  • 導入初期の課題は共通している: 電子証明書の管理、介護ソフトとの連携、操作方法の習得など、多くの事業所が同様の壁に直面している
  • 伴走支援の重要性:一人で悩まず、支援を受けながら段階的に進めることで導入がスムーズになる。アンケートでも「伴走支援の継続」を求める声が最も多かった
  • 普及率が効果実感の鍵:一部の事業所だけの導入では業務が煩雑になり、圏域全体での普及が業務効率化の実感につながる
  • 介護ソフトの対応が今後の課題:ソフトによって機能に差があり、真の業務効率化にはベンダーの対応も不可欠
  • 対面とデジタルの使い分け:定型的な書類のやりとりはデジタル化し、緊急時やニュアンスが重要な情報は対面・電話という使い分けが重要
  • 最終目標はケアの質向上:削減された時間を利用者とのコミュニケーションやサービスの質向上に充てたいという共通の思い

■参加者の前向きな反応

アンケート結果からは、参加者の多くが報告会の内容に満足し、導入への不安が軽減されたことが確認できました。特に、「実際に導入した事業所の生の声が聞けたこと」「成功事例だけでなく課題も共有されたこと」が高く評価されました。

既に導入している事業所からは「同じような課題を抱えていることが分かり安心した」「他の事業所の工夫を自社でも取り入れたい」という声が、これから導入する事業所からは「少しずつ始めれば良いことが分かった」「伴走支援を受けながら進められるなら挑戦したい」という前向きな意見が多数寄せられました。

■今後に向けて

株式会社最中屋は、引き続き令和8年3月まで米子市および参加事業所への伴走支援を継続し、本事業の成果を報告書や啓発資料としてまとめ、鳥取県内の他の介護事業所への横展開を図ってまいります。

本事業を通じて、地域全体の介護DX推進に貢献し、持続可能な介護保険制度の確立を目指します。米子市での取り組みをモデルケースとして、全国の介護現場におけるデジタル化推進とケアの質向上に貢献してまいります。

本件に関するお問い合わせ先
株式会社最中屋 https://monakaya.com/